持続可能社会の実現に迫る!SDGs達成にむけたブロックチェーン活用のチャレンジ!!|Blockchain EXE #20

Blockchain EXE#20は、ブロックチェーンが、SDGsで掲げられた目標である持続可能社会の実現をいかに後押しすることができるのか、各領域で活動する事業家と共に、その実態と今後の展望について迫りました。

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ブロックチェーンアイデンティティの今と未来 - 安田クリスティーナ|マイクロソフト・コーポレーション デベロッパー・リレーション クラウド + AI プログラムマネージャー

安田 クリスティーナ | マイクロソフト・コーポレーション デベロッパー・リレーション クラウド + AI プログラムマネージャー
1995年 サンクト=ペテルブルク生まれ、札幌育ち。パリ政治学院政治学部法学部を首席で卒業。2016年、個人が個人としてオンラインで尊重される社会作りをビジョンとする米NGO InternetBar.orgディレクターに就任。デジタル技術を活用した途上国支援をテーマに電子身分証明書事業を立ち上げ、現在、バングラデシュでパイロットプロジェクトを実施中。UNESCO、UNFCCC、ASEAN、EU主催の国際会議など、各国のフォーラムでのプロジェクト発表を通して、情報流出なく個人認証が可能な世界の実現がもたらすパラダイムシフトについての啓発にも取り組む。言語や異文化理解など自身の強みを生かして日本の世界的な競争力向上に貢献するために日本での就職を決断。NGOでの活動を続けながら、2017年アクセンチュアの戦略コンサルティング本部に新卒入社し、最速で昇進。2019年より現職に就く。

安田:初めまして。安田クリスティーナです。マイクロソフトとご紹介いただきましたが、たまたまお二人の登壇者がマイクロソフトforスタートアップでAzureをお使いいただいていて、ありがたい限りです。もし私が今日マイクロソフトの社員として発表するならば、Azureブロックチェーンサービスの話などもできるのですが、今日はあくまで「InternetBar.org」というアメリカのNGOで活動している話をさせてもらいます。

簡単に自己紹介をしたいのですが、私は母親がクリミア出身で、日本で育ちながら1年間に2か月はクリミアに行っていました。クリミアって、道路は割れている、水が出るか出ないかわからない、出たとしても汚い、年金は支払われない、常にインフレーションです。日本に戻ってくると、全く別世界です。何かがおかしいのではないかというのがきっかけでした。高校まで理系で、大学で文系に転科し、アメリカのシリコンバレーで技術を学んで、まさに文系と理系の交差点にいました。理系の人からは文系の人の理解の仕方を教えてと聞かれ、文系の人からはどのようにテクノロジーと付き合っていけばいいのと聞かれることが多いです。今年、マイクロソフトに入社し、仕事をしながらNGOの活動をしています。それは自分のパッションで、世界を変えていきたい、本当に変えられると思っていて、そのために大企業という場をうまく使わないといけないと思っています。高校までは札幌に住んでいました。そして、パリの大学に進学し、在学中はタイやアフリカの国際会議に出席したり、スタートアップをしたりしました。今活動しているものとは違いますが、NGOも日本にいるときに始めましたし、経営コンサルもしていました。

世界のアイデンティティ事情

今回は、「SDGs達成に向けてブロックチェーンを活用するには」という議題をいただきましたが、ブロックチェーンを用いたアイデンティティを付与することで、今までサービスを受けられなかった人たちにサービスを届けるということが、メインメッセージです。日本で戸籍を持っていない人は5%未満ですが、アフリカの国々では戸籍を持っている人が4割以下しかいません。そのため、アフリカでは、出生証明書がないので銀行口座が開けない、金融にアクセスできない、携帯のSIMカードさえ買えない、完全にデジタルエコノミーから切り離されるといった、いろいろな支障が出ています。この場で言うのも何ですが、ブロックチェーンだけでは何もできないというのが私の考えです。アイデンティティ業界でBLTS(Business、Legal、Technology、Society)というフレームワークを使うのですが、この4つの中で、自分がどれに当てはまるか今、決めていただいてもいいですか。Businessが多いですね。ありがとうございます。どういった問題かというと、自己証明手段がないためにサービスにアクセスできない人がたくさんいます。

巨大なブラックエコノミー

数値だけ見ると恐ろしいのですが、40億人が基本的な文書やその他の法的方法を利用できないため、生活を改善し、貧困から抜け出せない。これはBill&Melinda Gates Foundationがスポンサーをしているレポートです。40億人といえば、世界人口の約半分です。これは70年代にデソートという経済学者がリサーチを出しています。日本だとスムーズに進むものが、海外だとビジネスを登録するだけで2年くらいかかったり、不動産を登記するだけで700日くらいかかったりするのです。だから、そうするよりも違法で使い続けようという人が出てきてしまい、ブラックエコノミーがたくさん回って、このような数値になっています。ブラックエコノミーが回っているということは、自分がここにいるということも、こんなサービスをしているということもアピールできないので、普通のマーケティングができません。かなり小さいサイクルでしかビジネスを回し続けることができないのです。21億人が正式な契約を結ばずに働かされているというデータもあります。

インターネットへのアクセスもままならない

先ほどのSIMカードの話ですが、SIMカードを買うためにIDが必要なのですが、IDがないのでそもそもインターネットに接続できないという矛盾が生じています。SDGsでピッチするときは、16の平和の中の16.9、出生証明書も含めて、2030年までにリーガルアイデンティティを全員に発行しますという項目があります。このデジタル・レンジの定義はとても難しくて、根本的に「あなたは誰ですか」という質問なので、「私の国籍は…」とか、「私のLGBTの一面が…」とかいう人ももちろんいますし、Azure Active DirectoryのようなBtoBの新入社員をどのように登録しますかというアイデンティティをそのように考える人もいます。SDGsのテキストではリーガルアイデンティティに限っていますが、本人認証だけに限らず、医療系、金融系、そういった個人にまつわるすべてのデータが集まっているものがデジタルアイデンティティです。シンプルに言うと、実際の世界で生活しているかのようにデジタルの世界でも動ける。そのために必要な情報のことです。今、オンラインの世界では相手が誰かわかりにくいですよね。例えば、Facebookで知らない人と友達になっていたり、相手の人が本当はbotだったりすることがあります。

アイデンティティ問題への具体的方策

政府に依存しない

これをどう解決しようとしているかというと、日本やエストニアのような国だと、政府に力もお金もありますので、政府主導で行うのも問題ないと思うのですが、バングラディシュやザンビアのような国は、政府に不正が多かったり、そもそも政治家があまりやる気がなかったりします。そのような国には、政府一つに頼らないアイデンティティがあるべきです。インターネットは国境がありませんよね。その国境のない世界で動いているのに、インターネット上で自分を証明するときは国家に結びついたもので証明しなければならないという矛盾があると思ったとき、トラストワーカーはどうするということになります。政府を信頼しているから、本人認証手段が使えるわけです。そこで、いろいろな専門家にお話を伺って出てきた答えが、国際規格です。国際規格って面白くて、アイデンティティの場合は、サプライチェーンに関わっている人たち、ステークホルダー、発行している人、使う人が「これで行こう」と合意したら、政府がGOサインを出さなくても使えるようになります。有名なところだと、工場の規格をすべて決めているISO9000や環境のISO14000、その辺りを作っている組織の中でワーキンググループを立ち上げて活動しています。ここで大きなフレームワークづくりをしていて、これがブロックチェーンだけではできない一面です。では、どうやってブロックチェーンからこのプロジェクトに行き着いたかというと、ある仕組みを導入したいとなった場合に、政府が勝手にアイデンティティを発行してくれるならセントラルデータベースでいいのですが、複数の組織が合意した仕組みで動く場合は、お互いがきちんと情報をマネージした方がいいため、互いに完全に信頼していなくても情報を共有でき、かつ、互いに改ざんできないようなデータベースを新たに作る必要がありました。それを、ブロックチェーンを使って作ることになり、今年、バングラディシュでPoCを行いました。

分散型アイディンティの仕組みとは

せっかくなので、今の分散型アイデンティティの世界がどうなっているかをご説明します。基本的には、重くなってしまうので、ブロックチェーン上に情報は書きません。実際に情報を書いた方が絶対に誰も改ざんできないので、その方がいいと主張するマイナーもいますが、アイデンティティ業界としては書きません。では、何を書くかというとポイントを書きます。gitというポインターをブロックチェーンに書いていきます。これをUniversal Resolverという、要はそこにポインターを飛ばすと、そこに情報があると飛ばしてくれるところがあって、情報自体はアイデンティティハブにあります。これはクラウドかもしれないし、個人のハブやデバイスかもしれないし、そこは任せています。Verifiable Credentialsというのは、JSON形式で書いてある実際のドキュメントです。つまり、私がマイクロソフトで働いていますというのがVerifiable Credentialsで、ここに保存されていますというJSONファイルがgitに書かれています。git authenticationというのは、AuthやOpen ID connectなどのようにつながる仕組みです。それがこの4レイヤーなのですが、一番下のパブリックgitブロックチェーンというレイヤーで、ダイレクトコネクションを共有します。例えば、私が銀行と情報共有したいときに、携帯でFacebookが出る前に、番号から番号にSMSを送りましたよね。それと同じで、Peer to Peerのデュエリーコムというスペックでコネクションを作ってデータを送れるようにしました。アイデンティティの世界では、情報を発行する人、持っている人、使う人がいるので、情報をどう共有していくかというスペックがあります。私たちが差別化できているのは、ガバナンスがしっかりしているからです。このガバナンスもいくつかあります。1つはもちろんブロックチェーンの仕組み自体のガバナンス、つまり、技術面のガバナンスです。もう1つは個人情報に関わるガバナンスです。オンボーディングするときに誰がアクセスできるのか、そのオペレーションを回すときにはどうするかという部分は、もう少しきれいにDefine(定義)すべきだと思います。

デジタルアイデンティティの活用事例

今年、バングラディシュで実証実験を行い、医療分野でお医者さん向けに、その人は本当にお医者さんですという認証システムを、この仕組みを使って作りました。今、一緒に組んでいるTechスタートアップがUKでこの仕組みを使って30万人のお医者さんにクレデンシャルを発行しました。これは、お医者さんが病院間で異動するときに毎回情報をペーパーで出さなくても済むようにするためのもので、「ウォレットでこの情報を共有しますか」、「はい」、「この情報をウォレットに入れますか」、「はい」という手続きだけで、そのアドミン系の業務を回せるようにしました。それをバングラディシュ語にアレンジして行ったのが医療分野での取り組みです。教育分野に関しては、この人は本当に先生ですかという認証システムを作りました。バングラディシュでは、テレエデュケーションがかなり進んでいます。要は、画面越しに先生と対面するわけですから、とてもニーズがありました。

今後の課題について

難しいのは、最初にBLTSの話をしましたが、Societyというのは現場の理解が欠かせません。この間もアフリカで農業系のサービスを提供しているスタートアップにアイデンティティをどうすればいいでしょうかと相談を受けました。正直に言って、彼らがきれいなテックリクワイアメントを書くことさえできれば、技術側は作れます。このテックリクワイアメントというのは、現場をよく理解していないとできません。次に例を出していきますが、先ほど説明したプロジェクトもビジネスモデルをどうアダプションしていけばよいか非常に悩んでいます。

法体系による課題解決

あとは、この前エストニアの大統領に質問する機会をいただいたのですが、とても響いたのが、「デジタル国家はテクノロジーではなく、その周りの丁寧に作り込まれた法体系である」という言葉です。本当にその通りだなと思いました。従来のBLTSに、最近Cultureが加わって、これをどう定着させるのかということが新しい問題提起として出てきました。具体的な例として、インドのアダハルでリサーチをしたときに、奥さんがアイデンティティを持つことに夫が反対していて、いくら政府が発行しようと言っても、アイデンティティを持たせられない。このように、アイデンティティは、技術以外の問題がほとんどです。あとはアイデンティティを大切にしないことです。私がいくら彼らはアイデンティティがないので、サービスが受けられないと言ったところででも、何このペーパーという扱いをする人もいます。それも事実です。

時間がかかるという課題

それと同時に、再発行や住所変更手続きをするのに6か月もかかるという問題もあります。運転免許証頼りでウーバーイーツのような仕事をしている人だと、これは致命的です。ですから、代わりにやっておいてという仲介ビジネスが発展して、それを悪用した詐欺も出てきます。

モバイルデータの使用期限がきれてしまうという課題

あとは、仲介者とのやり取りにモバイルデータが必要なのに、モバイルデータが切れてしまって、いつ預けたパスポートを取りに行けばいいのかわからないという問題です。

ブロックチェーンは現実解と融合していく

ここまでブロックチェーンの話をしてきましたが、個人的にはブロックチェーンを使わなくても、このアイデンティティができるのではないかと考えています。実際に今、アイデンティティの世界は、従来型のOpen ID connectやAuthn側の世界と新しく出てきているブロックチェーンベースのdecentralizedアイデンティティの世界は統合していくと思います。従来型の批判としては、技術は作ったけれども、アダプションが進んでいるスタートアップがあまりいないという問題があります。

また、最近いろいろなところでお話させていただいているのは、diversity inclusionを誰も考えていないことです。マイクロソフトの社内でも、白人の人間が作ってしまったテクノロジーが、実はアジアやアフリカなどで使えないため、きちんとチームにアジア系、アフリカ系の人を入れて考え直そうという流れがあるので、とても大事です。

SDGsの必要性について

最初に、SDGs16.9についてお話しましたが、SDGsは本当に必要なのだろうかという問題があります。これはプロジェクトメンバーの一人がシリア難民で、今、オランダで起業している人がいるのですが、彼がヨーロッパ中の大学でスピーチしている内容です。そもそも私はCSIよりもCSV(Creative Shared Value)を大事にしていて、SDGsをきちんとビジネスにしなければ意味がないと思っています。最近、フィンテック業界からお声がけいただいて、フィンテック×SDGsの分科会の立ち上げを行っています。そこに入ってSDGsを進めることで資金調達をしやすくなり、自分のビジネス自体が持続可能になりました。要は、社会と関わらないビジネスはないので、そこをきちんと考えると持続可能になります。あとは、対顧客化です。ヨーロッパのマーケティング会社が日本に来たとき、ヨーロッパだと「私たちは環境に優しいんです」と訴えると売れるのですが、日本で同じCMを流しても、日本人は”?”という顔をして、これは何ですかという反応をしたときに、泣きそうになったという話も聞きました。こんな風にSDGsを使っていかなければなりません。おそらく、SDGsと関連づけられない活動は存在しないと思います。どんなビジネスも社会と関わりがあるので。今日の前半の話だと、SDGsを実現するためのプラットフォームという背景が多かったと思います。水をきれいにするとか、そういった特化型のプロジェクトが多いのも事実なので。SDGsは日本のような国においてはフレームワークとして本当に大事だと思います。今日お越しくださった皆様はSDGsについて真剣に考えてくださっていますし、私の役割は問題提起なので、本当に必要なのかなということをもう一度考えていただいて、必要だという風に再認識していただけるのであれば、ぜひ周りの人にもっと広めて、今日ご紹介させていただいた4つのプロジェクトに参加するなり応援するなりして社会貢献していただければ、私も今日20分使った甲斐があったかなと思います。ご静聴ありがとうございました。

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